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こばなし [お話]

ぽちともげが料理するだけのこばなし
夏の日差しが真っ青な空に天高く昇っている。そろそろ昼食の時間だ。
コックが今日は休みなので、自分が今日は昼食を用意しなければとニビは仕事の手を止めて台所に向かった。
冷蔵庫を開けると、肉じゃがと味噌汁が作り置きしてあった。コックの良虎は気が利くので、たまに材料が余ったりするとこういったものを作り置きしておいてくれる。
(じゃああとはおにぎりと…だしまき卵くらいでいいか)
簡単で時間もかからない。そう思いシャツを軽く腕まくりした時、キッチンの扉が大きな音を立てて開く。
「もげ!ここにいた!ぽちはおなかがすいた!なんかくれ!」
くそでかボイスをまき散らしながら、ぽちが勢いよく開いた扉から一直線にやってくる。
「あ!なんかつくってる!なんだ!?ごはんか!?ごはんだな!?」
ぽちはニビの横をうろうろと反復運動をしながら手元を覗き込もうとしている。そりゃそんだけ無駄に動けば腹も減るだろうとニビは思いながら、手を洗う。
「今からおむすびをつくろうと思うんだが、お前も作るか?」
何事も経験だ。もしかしたら意外と作れるようになるかもしれない。
「おむすびをか!?つくる!」
即答するぽちに手を洗うように指示し、自分のエプロンとぽちに合うサイズのエプロンを取り出して着させる。
ボウルに塩水を軽く作り、レンジで温めたごはんを取り出し、のりと大き目の皿と並べる。
「ぽち、先に俺がにぎるからみてろよ。」
ニビはボウルの塩水で軽く手を濡らし、手早くご飯を握ると、ぴんと角のたった三角のおむすびができた。それにのりを巻いて皿に置いた。
それをふむふむといった顔で見ていたぽちも、塩水に手をつっこむと、ご飯を手に乗せれるだけ乗せる。
「で、こうやってにぎ…る!」
ぎゅっとごはんが一瞬にして小さく圧縮される。
「おかしいな、ちっこくなったぞ?」
不思議がるぽちに、力を入れ過ぎだとニビが忠告するより早く、ぽちは小さくなったおむすびに更にごはんを追加する。
「こんなちっこいのじゃおなかいっぱいにならないだろ?」
そしてまた力をこめてにぎると、更にごはんを追加するを繰り返す。
結局ニビが他のおむすびを作ってる間に、2合ほどのごはんがおむすび一個に凝縮されたものができたが、ニビはもう何も言わなかった。
「次は何だ?」
鼻息荒く聞くぽちにニビはは卵を割ってみせる。ぱかっと二つに割れた卵のカラから、透明な卵白とオレンジがかったぷっくりとした黄身がでてくる。
調味料を入れ、軽く混ぜる。そして油を引いたフライパンに入れ、固く固まらないうちに菜箸でくるくると卵を巻いていく。
たまごを普段生卵そのまま食べているぽちは、玉子が焼かれてる様子を穴が開くほどじっと見ている。ぽかんと開いた口からはヨダレがちょっと垂れていた。
綺麗に巻かれた卵をまな板にのせると、ニビは包丁で食べやすい大きさに切った。端っこの切り取ったところはぽちの口に放り込む。
「ぽちもやる!」
口をもぐもぐしながらぽちはボウルに卵を叩きつける。
ぐしゃりと悲壮な音を立てて黄身と白身と卵のカラが混ざった状態の卵がボウルの中に無残に滑り落ちる。
「っかしいなーこうかな?」
ぐしゃりぐしゃりと卵を潰しながら、10個ほど叩き潰したところで、やっと綺麗に割れた卵がボウルに入る。
適当に調味料を山盛り入れると、卵のカラも取り除かずに油も引いてないフライパンに流し込む。
当然綺麗に巻けるはずもなく、巻き卵ではなく、スクランブルエッグの様相になっている。
「よーし!できた!」
だがそんな状態はどこ吹く風で、ぽち本人はご満悦のようだ。
「あれーなんかいい匂いがする~」
そこに庭仕事を終えた遊樹がキッチンに入ってきた。
「ゆう、ちょうどいいところに来た!ちょっとこっちこい!」
ぽちが遊樹を呼ぶ。
「ぽちともげがごはん作ったから、お前にも分けてやろう」
「え、いいの?俺めっちゃお腹へってたんだよね~」
何も知らず嬉しそうにぽち飯を受け取る遊樹に、ニビは(遊、すまない、それを作らせたのは俺だ…後で胃薬を持って行ってやるからな…)と密かに思ったのだった。
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